マックス・ウエ-バ-とアルビン・トフラ-に学んだこと(2020/8/5)
  2016年6月30日朝日新聞デジタル版にアメリカの未来学者アルビン・トフラーが6月27日亡くなったことを報じていた。アルビン・トフラーの「第三の波」は1980年に出版され、ミリオンセラーになりました。1982年に邦訳が出ると同時に読みましたが、私はとてつもない衝撃を受けました。

 コンピューターの利用が中小企業にも押し寄せ始めていたころで、フレックスタイムとか、新しい労働者像とか、男女の新しい働き方とか、事務所を立ち上げて間もない頃であったのでこの書を読んだときは大変な刺激となり、事務所経営にも大きな影響を受けた。

 トフラーは人類の歴史を三つの段階に区分します。
 狩猟が主なる生活手段であった段階から農業が定着し恒常的な生活手段となった農業社会、こういう段階を第一の波と名付けます。
 やがて蒸気機関に代表される機械が出現し、社会の生産力が飛躍的に増大させます。こういう産業革命がもたらした社会を第二の波と名付けます。この第二の波の社会が私達がつい最近まで生活していた社会と言うことになります。こういう社会に戦争を契機としてアメリカで電子計算機(エニアック)が登場してきます。きっかけは大砲の射角を計算して数表を作成するという単純な目的を果たすべく登場したこの新しい道具が思わぬ進化を遂げ出すのです。単に計算をするだけでなくデ-タを処理するという多様な機能を持つものに変身を遂げ出すのです。この新しい電子計算機(コンピュ-タ-)がもたらした社会(情報化社会)を第三の波と名付けます。

 私たちが、現在、生活している社会を第二の波と第三の波が入り混じっている社会とし、次第に第三の波の社会に主軸を移しつつある社会と位置づけるのです。

 トフラーは産業革命後の社会(第2の波)の社会がどういう社会かを以下の六つのキーワードで説明します。

規格化の原則

専門化の原則

同時化の原則

集中化の原則

巨大化の原則

中央集権の原則


 トフラーはこいう六つのキーワードで第二の波の社会の特徴をを鮮やかに説明してくれます。私はこの六つのキーワードの個々の説明を読んでいて真っ先に思い浮かべたのがマックス・ウエ-バ-でした。マックス・ウエーバーは「プロテスタンテイズムの倫理と資本主義の精神」で資本主義社会がいかなる精神的な基盤から勃興してきたかとか、「官僚制」がいかに規則的、効率的に社会を機能させる役割を担ったかを解明しました。大衆に大量の工業製品を供給し豊かな生活を享受させることができたかを主張しました。ウエーバーはマルクスとちがって近代社会を肯定的に評価したと考えるのです。ただし、こういう社会にも当然「光と影」があるわけで、20世紀初頭のチャップリンンのモダンタイムスが描くような「影の部分」が出現してくるわけです。難しく言えば「近代人の疎外」といわれるようなことが起こってくるわけですが、とにかく大衆が幸せになるためにはこういう「近代人の疎外」に耐えなければならいというのがマックス・ウエ-バ-の主張であったと思うのです。

 こういう重い桎梏をコンピュ-タ-が解放してくれたというわけです。トフラーは肯定的に前向きに受け入れます。しかし、第三の波に洗われれ進化を遂げればまたそれなりに「影の部分」もふえてくるというわけです。小林秀雄をして、「(コンピューターは)ちっとも良くないのです」と言わしめることとなります。

 究極のところ現代社会を生きるには私達は「主体性を持って生きなければならない」と思うのです。私の卒業した大学図書館の入口の壁面に「自ら調べ自ら考える」という言葉が刻み込まれています。この大学に入学した4月にたまたま手にした「マックスス・ウエ-バ-」(青山秀夫)を読んで大きな影響を受けました。原先輩と立ち上げた会計事務所の経営では「第三の波」(アルビン・トフラ-)から新しい労働者像等幾つかの有益な教示を受けました。私は来年80歳となりますが、人生の最後に生きてきた証として書きました。

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