調書作成の実務

目  次
T.調書とは何か
  1.調書は何故必要とされるか
  2.統一の必要性
U.調書の分類
  1.永久綴込調書
  2.当座綴込調書
  3.過年度当座綴込調書
V.当座綴込調書の綴込方法の一例
W.調書の書き方
  1.一般的な注意
  2.当座綴込調書
  3.執務表
  4.問題別調書
  5.決算調書
X.調書の整理保存


T.調書とは何か
 医師にカルテ、公認会計士に監査調書、測量士に野帳、弁護士に手控えというようにそれぞれ職業的専門職に特有の記録方法があります。とりわけ医師のカルテ、公認会計士の監査調書は法律で義務づけられています。そこでここでは我々のような小さな税理士事務所に限定して調書とは何かについて小考してみたいと思います。

監査調書
公認会計士が証券取引法に定められた監査業務を行う場合法律で作成が義務づけられています。その様式形式内容が次第に実務上定型化しつつあるようですが、具体的な実践的な面では会計士のノウハウであるあるようです。監査調書の作成の技術で専門家としての資質が判定できるといわれています。

税務調書
税務調書なる概念が何を指すかは明確ではないかも知れませんが、ここでは税理士事務所においてその業務全般で作成される一切の資料と定義づけておきます。したがつて、法律で作成が義務づけられているわけではありませんし、また、通常の税理士事務所にはこうした調書という言葉すら存在していないのが現実です。大概は事務所の便箋にメモ書きして済ませている程度である。したがつてその様式や形式は未だないし、無自覚的な状態で各職員の任されているといつても過言ではありません。従って強いて税務調書というものを作成する必要もないかのごときである。しかし以下の目的のために必要欠くべからざるものである考えます


税務調書が何故必要とされるか

税務業務の合理的な遂行に欠かせない理由を以下に簡単に列挙してみます

1.法人税始め各種の申告書の作成に便利である
2.決算を組む場合に役にたつ
3.税務調査に対処するため
4.次期以降の指導に欠かせない
5.多勢で仕事をする場合にコミニュケーション上必要である
6.担当者間の代替が可能となる
7.問題発見の手がかりになる
8.責任と権限の明確化に役立つ
9.クライアントに対する迅速なサービスを可能にする

調書の書式や書き方を統一することの必要性
こうした幾つもの効用が認められる上は税務調書の概念を確立する必要がある
また、誰がみてもわかるようにするためには書式や内容記載方法を統一する必要がある
以下に示す方法は大きな枠組みであつて問題別調書等各人の創意工夫を必要としている。
こうした技術は絶えず相互に交換し合いよりよいものを生み出すことが必要である。



調書の分類

監査調書と同様二つに分類される。
1.永久綴込調書
  決算書
  申告書
  更正決定通知書
  定款
  各種議事録
  会社登記簿謄本
  税務官庁への各種届出書
  比較貸借対照表
  比較損益計算書
  経営分析表
  株価計算書
  株主一覧表
  その他永久保存に必要な書類

2.当座綴込調書
  作成される時期により二つに分類される
(1)期中調書
   一会計期間中に作成される調書を総称する
   一般的調書
    試算表、資金繰り表、各種の内訳表等
   執務表
    日付、時間、場所、執務者、執務内容をその都度記録する
    これにより次期以降の合理的な業務遂行が可能となる
   問題別調書
    執務表の執務内容をより詳細に記録をしたもの
    記録方法の具体的なことについては調書の書き方で詳細する

(2)決算調書
   決算時に作成されるもののいつさいをいう
   総括調書
   科目別にこだわらない
   項目別調書
   現金預金等の科目別に作成されるもの




調書の書き方

一般的指針
1.面倒がらずこまめにかく
2.調書を書くことをくせづけること
3.かならずしも名文は必要とはしない
4.簡潔を旨とすること

例えば、会計処理で間違いを発見した場合、文章で記述は不要である
必要な会計処理は次の3段階で説明される

第1段階 会社の処理を仕訳の形でつかまえる

第2段階 正しい処理を仕訳の形であらわす

第3段階 修正のための処理




問題別調書の書き方

1 事実の概要
予断を交えず事実を客観的に事実のみを書く
具体的な図や絵も参考になる

2 問題点を書き出す
税務上、会計上から検討を加える
先輩や同僚に意見を求める

3 解決案を考える

4 結果を評価する
各種の案について利害得失長所短所を検討する

以上の結果をクライアントに充分に説明する
その選択はクライアントに任せる




決算調書作成の具体例

資産負債の全項目について総括表を作成する
ただし電話加入権出資金等の前期から移動の無いものについては省略してもよいしかし、決算報告書にはこうした異動の無いものについても内容を記載すること何期か経ることにより内容が不明となる場合があるから注意が肝要である

現金預金
売掛金
有形固定資産
預り金
借入金

売上
仕入
人件費
租税考課
賃借料
支払手数料
営業外収益




調書の整理保存

過年度当座綴込調書
決算終了後、期中調書、決算調書を当座綴込調書から除きフアイルする。
決算に際し別にフアイルを用意している場合はこれに期中調書を綴込んでフアイルする

フアイルの背表紙には

 土屋工業(株)当座綴込調書(平成2年3月期)

と標記する。

保存期間

あとがき
このパンフレット「調書作成の実務」は原と柳瀬が、これまで仕事をしてきた過程で積み上げられてきたものです。事務所も規模を拡大するに連れて職員も増えてきましたがその研修の為に柳瀬がまとめたものです。原先輩が平成20年7月に亡くなりましたが、柳瀬としてはこうした我々の歩みを後輩諸君に引き継いで貰い、もっともっと大和会計社を充実して欲しいと念願しています。’12/4/26加筆)


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