勉強の仕方

 私は「雪高生の進路を考える」に2回出席をさせていただき、8名の現役大学生の話を聴かせていただきましたが、残念ながら少なからざる不満を感じています。そこで私のような何度も試験に失敗した人間としてはどうしても書き残しておかなければならないと考え、書き残すことにしました。

 不思議なことに私の受けた小学校、中学校、高校、大学の教育の中で一度も勉強の仕方を教わったことがないのです。勉強の仕方は自らに修得させることが教育だと、突き放されると一言もありません。
最近、新日本法規出版社から送られてきた小冊子「法苑」に日大教授が「大学における初年次教育」と題して大学におけるこうした取り組みを紹介しておられます。高校までの教育は受動的であり、大学からの教育は能動的である訳ですから、この切り替えに戸惑う学生に対しての対応の必要に迫られてのことと思われます。ただ受動的な教育といっても高校生ともなるとそういう教育を受けるモチベーションがなければとても効果が有りません。
 ’11/2/11開催された「雪高生の進路を考える」で京大農学部に進学したベルグーン君が受験勉強の本質を突いた話をしました。ひたすら覚えるだけというという彼の話は本当にその通りなのです。ただ彼の話の後、女性の先生が、直ぐに「彼はたくさん本を読みました」と補足されました。この本をよく読んだということがとても大切なのです。「覚える」ということの背景に理解できる力がなければなりませんし、「覚えるという」この受動的な教育を積極的に受け入れるということに対するモチベーションがないととても身に付きません。

 1、2年次に基礎的な体力となる「本を読む」という大事なことを欠いては話になりません。知的なことにに対する好奇心を涵養するという意味でこの読書量がとても大事なのですが、この読書の不足を補う方法としてラジオの連続講演、CD等の利用を勧めたいのです。とにかく読書量が少ない今日の高校生がどう対処するかです。私はNHK第2ラジオ教養番組をmp3フアイル形式で録音して山道で聴いていますがとても有益です。このほかCDなどがたくさん市販されています。こういうものを利用することで読書量の不足を補うことも考えられます。

 それからもう一つ付け加えたいこがあります。私は2回ほどこの会に出席させていただきましたが、まだ誰も触れられていないのが勉強の仕方です。それも具体的な方法です。

T勉強の仕方には大きく分けて二つの方法があると考えます。

1.京大式カード(A4A5ルーズリーフ式ノート)を用いる方法です。

この方法は調査研究等に最適です。・・・・京大人文研の共同研究等で知られています。研究者はこの方法を使っています。この方法は梅棹忠夫「知的生産の技術」(岩波新書)で紹介され注目を集めましたが、研究者の間では昔から実践されてききました。

教科では数学国語英語に向いています。

数学・・・教科書の基本的な問題を解くことが大事なことは言うまでもありませんが、ただ解くだけではなく基本的な問題をルーズリーフ式のノートに記録してパターン別に分類することが大事です。受験指導で有名な和田秀樹さんが「数学は暗記だ」と云っていますがそれはこういう問題解法の定石を知ることの大事さをいっているのです。

国語・・・読書量が問われます。古典の場合はNHKの古典購読、CD等の音声で全編を聴くことがとても大事だと思います。「奥の細道」など1時間強で聴くことが出来ます。書誌学者の林 望さんは芸大大学院の講義は「平家物語」をご自身が朗読するだけですと講演で話しておられました。私はこの「平家物語」の「只度都落ち」を聴きましたが原文ではなかなか骨が折れますが朗読で聴くと明快です。私は山道で「歎異抄」「太平記」等を何度も聴いていますが原文を読むよりよくわかります。「蘭学事始」は国語教科書に菊池 寛の文章が載っていますが、これなどは岩波文庫で杉田玄白の原本を是非一度読んで欲しいと思います。文法だ注釈などに拘る必要はありません。

英語・・・残念ながら和文英訳、英会話はとてもお話をする自信はありません。大学を出てから必要に迫られて英語を勉強しましたが英文を読むだけです。栄光学園のハンスシュトルテ神父に習ってアメリカの小学校1年生から6年生までの国語教科書から始めました。6年生の教科書に「大草原の小さな家」の一節が載っています。昔、OXFORD ENGLISH PICTURE READERS等の英米の小、中学生程度の洋書をかなりの冊数を読みましたが、甥や従兄弟からはとても役に立ったという評価を得ています。

 私がこういう易しい洋書をたくさん、読むのを勧めるのは語彙が増えるのはもとより、一番の効果は文法や語彙の完璧主義から抜けだし、文意を掴む訓練になるということです。分量の多い英文を読んで文意を掴むこの訓練が大事です。

 岩波ジュニア新書には国語や英語に関する何冊かがありますので、これを読むのもとても役に立ちます。

2.A3またはB4集計用紙でサブノートを作る

この方法が知識を「覚える」ことに最良の方法であり、試験といわれる試験を突破するための秘訣です。ベルグーン君が受験勉強の本質を突いた話をしましたが、その具体的な実践方法がこれなのです。

教科では理科、社会に向いています

この方法は何段階かの段階を踏みます。
(1)カレンダー12枚の裏を利用します。
教科書の章毎に内容を箇条書きにまとめます。
内容に応じて段落を付ける。
なぜカレンダーなのか・・・A2とかA1の大きさと丈夫さ(書いたり消したりすることが出来る)

(2)授業で聴いたこと等を補足して書き込みをしますが、余白が足りなければメモ用紙を部分的に貼り付ける

(3)期末試験時にはA3またはB4集計用紙に清書をする

これを教科毎にフアイルをしておきます。

この何度も書き写すこと・・・・これが学問の要諦(湯島天神の日めくりカレンダーにそう書いてありました。)です。

どの教科にも「要点整理」という要約型の参考書がありますが、いわばこれを自分で作るのです。ここに至たるプロセスの中で学習をしているのです。

覚えることを視覚的に書き出すことで目をつぶれば上から順に浮かんでくるというわけです。

1,2年次に勉強したことを残す・・・センター試験に対応できます。
部活をしている生徒にはこういう勉強法が欠かせません。単純に教科書を読んでマーカーを塗っているだけでは頭の中にも、また形としても残らないのです。

(補足 ’12/2/11に開かれた「雪高生の進路を考える会」に出席した折、城南予備校自由が丘校の方が普段の学校での勉強の重要性にふれておられましたが本当に良い指摘をされました。予習をして1章なりの大きな枠組みを書き出しておき、それに授業中に書き足すのです。参考書を読んで不足があれば書き足します。参考書は定番の一冊があれば充分で何冊も買い込んではいけません。とにかく大きな紙(A3判とかカレンダーの裏)に章別に段落などのメリハリをつけて書き出すのです。これが期末試験対策であり、2,3年後のセンター試験対策なのです。)

U 論文作成にはKJ法の利用する。
 このKJ法を使うと記述する内容を論理的に整理することが出来ます。自己の知識の欠落を知ることが出来ます
清水幾太郎「論文の書き方」(岩波新書)等を読みましたが、論文には「起承転結」があるなどの話であまり参考にはなりません。とにかく実践的な方法論としては川喜田二郎「発想法」「続発想法」(中公新書)、梅棹忠夫「知的生産の技術」(岩波新書)等を読んで目の前が開けた感じがしました。

V 一番の根本は本を読むです。
1,2年次にたくさんの本を読むことです。
 各教科の先生から高校生が3年間に読まなければならい本を推薦して貰うのもいいと思います。
ただ、本を読むというとすぐに、漱石だ、鴎外だとかの小説を思い浮かべれるかも知れませんが、岩波新書、岩波ジュニア新書、中公新書等から興味のあるものを選んで読まむことも大事だと思います。ここで自分がどんな分野に興味があるのかとか、自分の進路を漠然とでも考えることが出来ると思います。

参考図書 梅棹忠夫「知的生産の技術」(岩波新書)
川喜田二郎「発想法」「続発想法」(中公新書)


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