山のことあれこれ
赤線病と赤丸病
私は一つの山域の登山道を歩くと地図を見ていてその前後の道が気に懸かりだす。その山域が遠くて交通費やら日程の制限でたびたび行けない時はあきらめるが、比較的近い山域だと何度か歩いて地図上の前後の道に赤線を塗りたくなる。山を歩く人たちはこういう症状を赤線病といっているがどうも私にはその気があるようである。ただこの赤線病は罹ってもさほど心配はないといわれている。ただあまり人様にあそこを歩いた、ここを歩いたといって自慢話をすると聞きくるしいので嫌がられることもあるのであまり言わないほうがいい。聞かされても他愛のない話と笑い飛ばすか、すごいですね等とおだてる手もある。また赤丸病という病気もあり、これは赤線病などとは比べようもないくらい恐ろしい病気であるといわれている。とにかく症状は「○○名山」とかいうリストの中の山を片っ端から登って赤丸をつけるという登り方で、症状が重くなればもっとも山頂に近いル-トを探しては車などの機動力で登るという登り方で、こればかりはどうもいただけない。山登りとはいってもまったく非なるものである。そんなことから山歩きの本当に好きな人たちからは忌み嫌われている病気である。こういう患者にはつける薬がないというのが本当のところで、山の病気でも一番恐れられているようだ。ただ私も「関東百名山」、「甲信越百名山」、「山梨百名山」等のガイドブックを持っていてこの山に登った、あそこの山に登ったといっては印をつけているので赤丸病に罹らないように注意はしなければならないと自戒している。とにかく数を競いだすと中身というより表面的な数に惑わされそのことが自己目的化するというのが一番恐ろしいことかもしれない。総じて趣味というものは仕事があってその余に楽しむもだということだろう。本末転倒であってはならないと自戒している。
注:この「赤線病と赤丸病」については「新ハイキング誌」で読んで一部を書き写していたのですが、原文がどこに載っていたのかバックナンバ−を探したのですがわかりませんでした。とにかく視点が面白いのと自分自身に対する自戒として少し手を加えて載せました


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