山のことあれこれ
銭湯雑感
 山から帰ると近所の銭湯に行く。山に行かない時も週末に1回は行く。これが私のささやかな楽しみの一つだ。10月10日は銭湯の日とかで、6年ばかり前に都内の銭湯で先着100名に東京都区内の銭湯マップが配布された。あいにくこの日は山行きで帰宅が遅くなり間に合わず、後日、鵜の木の第二栗ノ湯のご主人から特別に頂戴した。それから銭湯で貰う小冊子「1010」に注意をしていると何年か置きに新しい版が配布されるようで、最近、東京都公衆浴場組合に銭湯マップを申し込み送ってもらった。山に行かない土曜、日曜に事務所や秋葉原や蒲田に出掛けた時、帰りは電車を利用せず徒歩で1時間から2時間歩いて帰宅する。途中、喫茶店に入るよりはと通りかかった銭湯に入る。そんなことで土日に出掛ける時にはザックにタオルを入れており、入浴した銭湯は都内では20箇所以上になるであろうか。

 都内の一般的な銭湯の様子を紹介しよう。入口を入ると受付けはフロント形式だ。タオル、下着、アイスや飲み物が売られている。脱衣場にはマサージ機、血圧計、ドライヤーや体重計が備えられている。浴室はシャワーがあり、狭いがサウナもある。浴槽は何槽かあり、1槽は薬湯で、2槽は電気、3槽は気泡、4槽は水と分かれている。気泡も背中と足と足元と3ヶ所から勢いよく吹き出していていい気分だ。気泡は3から5馬力のモーターで吹き出しているので家庭用とはずいぶん強さが違う。一番気に入っているものが電気だ。これは浴槽の前後の壁に電極があり、4、5ボルトの弱い電気がお湯の中を流されている。この間に坐る訳だが、電極に近づけば近づくほど腰部の筋肉に電流が流れ暖まるという訳で腰痛にこれほど効くものはないと思う。見えないバリアにでも近づいた感じで電気が腰部を走り慣れない人は入ろうとはしない。私には腰が重い感じの時はこれに限る。大型のパナコランと考えてもらえば良い。薬湯は効能書きが掲げられているが真偽のほどは分からない。お湯の温度は平均43度前後で温めが良い人には少し熱いとおもう。とにかく天井が高く浴室が広いのでとても気持ちが良い。ただ都心に近くのマンション併用型は全体にこじんまりしていて天井が低いのが難点だ。サウナもあるが私は余り利用しない。何故か熱すぎるのだ。不用意に入ると気管支をやられるような気がする。利用する時はタオルを口にあてがい、熱気が気管支に入らないように用心をする。

これまでに入ったところは大体がこんなものだ。電気は関西では多いそうだが関東では普及率は10%前後だそうだ。大田区では地下100m前後から汲み上げた褐色の鉱泉(黒湯という)を温めているところが多い。これまでに入った池上温泉、馬込温泉、蒲田温泉、六郷温泉、鵜の木温泉がこの黒湯だ。ここはいずれも大広間が有り、湯上がりには冷たいビールが飲める。カラオケも完備している。歌っているのは年配の人が多く、とりわけ年配のおばちゃんは持参のロングドレスに着替えてステージに立っている人も多い。こればかりは私の趣味ではない。しかし、聴かせて頂くのはきらいではない。時々、小ジョッキと枝豆で楽しませて頂いている。蒲田駅から近くて何度か利用している「ゆーシテイー蒲田」は建て替える前は千代ノ湯と言ったそうだが、黒湯の浴槽は露天(板で一部か覆われているが)で、この浴槽の横には打たせ湯まである。ここも2階は大広間で湯上がりに生ビールが飲める。変わったところでは荒川区の三ノ輪にある大勝湯は石川県の和倉温泉の泉質を真似て塩を溶かし込んで強い水流で循環させている。それと草津温泉の湯の華を溶かし込んだ横になれる浴槽が印象的だった。サウナは大きさは様々だがかなりの銭湯に設置されている。ただし別料金のところが多い。料金も200円から始まり様々だ。サウナは総じて高温過ぎるのが欠点だ。そんなことで利用する人が意外と少ない。世田谷区の白山湯はフインランド式サウナとのことで出掛けて見たがさほどのことはない。若干低いかなという感じだ。温度を低くしてのんびり入れるサウナがあればと思う。蒸風呂のイメージか。とにかく銭湯の設備には目を見張るばかりだ。
高級なところでは平和島の京急クアハウス、横浜のそごうの隣のビルの14階にあるスカイスパYOKOHAMAなどだがこれは料金が3から4千円前後と高くてひんぱんに利用するといわけには行かない。1,2度利用してみたが格別なことはない。飲み食い等でうかうかしていたら1万円位すぐだ。やはり400円の銭湯が一番だ。また、温泉地は泉質と景色だけが自慢で設備には見るべきものが無い。千葉(勝浦、白浜)だ、山梨(石和)だ、静岡(伊東、熱海)とご招待などで出かけることがあるが費用対効果という経済分析では銭湯にはかなうまい。しかし、銭湯が全部が全部、こんな風に資本を投下してリニューアルしたところばかりではない。池上駅近くにある徳持湯(名前をあげて失礼!)は番台方式で、銭湯マップに「昔ながらの姿でやってます」とあったが、脱衣場は暗く、お客も少ない。お湯につかり壁の剥げた富士山のペンキ絵を見ていると、東京に来た当時のことを思い出しなにかしみじみとしたものを感じさせられた。商店街にあった東湯は廃業したが4丁目の都湯さんが大幅な改装をされれた。これまでは鵜の木まで自転車で出かけていたが歩いてすぐのところとなるととても便利だ。お客さんも大幅に増えたようだ。改装後は左の浴槽には2種類のジャグジーがあり、腰を掛けて入浴できる。中央の浴槽は浅く、浴槽の右手には肩にお湯が当たるように鎖がぶら下がっていいる。右端の浴槽は宝寿湯と称する薬湯で、この壁には例の電気がある。このほかサウナと水風呂もある。一番気にいっているのが薬湯の電気だ。近所にこういう銭湯が出来たのでとても便利だ。私のように大田区でも下町の町場に住んでいるととにかく便利だ。

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