田崎篤次郎先生
 5月のある日の未明、お手洗いに起きて床に戻っても寝付かれず、NHKラジオ深夜便を聴きました。丁度、天野雄吉の隠居大学で対談の相手はシェイクスピア学者の小田島雄志先生ですシエイクスピアノのハムレットの有名な一節To be or not to be,that is the question.の翻訳の話で坪内逍遙訳、中野好夫訳、福田恒存訳、小田島雄志訳の紹介です。普通は「生か死か」と単純に訳されて理解されているようだが、どうも話はそうではなさそうだ。こういう訳は福田恒存訳だけで他は違うのだ。イギリス人の演出家が来日し演出した折、この部分をTo live to dieと直訳して聴かせたところNGがでたという。ネイテブでなければ理解できないニュアンスのようだ。
 この時、大学で教わった田崎篤次郎先生のことを思い出しました。教科書はミルンの随筆ですが深く文章を読むのです。文章の背後まで踏み込んで読むのです。授業中、質問を受けました。深く考えもせず答えたところ、どこの高等学校だと問われて厳しく叱責されました。そんな上っ面の理解しかできなのかと言うわけです。こうしてイギリスの随筆家の書く文章がどんなに深い含蓄を有するのか思い知らされました。この教科書は私の本棚の一番上にほこりにまみれて積まれています。(未完)

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