★「ヘリコプターマネーは、どうして危ないのか  金融政策は物価をコントロールできなくなる}東洋経済オンライン山田 徹也 :東洋経済 記者 2016年7月22日 を読む
 ☆ 「ヘリコプターマネー政策」(以下、ヘリマネ)が本当に投入されるとしたら、2013年4月開始の異次元金融緩和、2016年1月に導入が発表されたマイナス金利政策を上回る衝撃度である。

☆ 従来の財政・金融政策との大きな違いは、「借金」(debt)でなく「銀行券」(money)で財源を手当てし、大規模に財政出動(減税や歳出拡大)する点にある。

☆ 国の借金はいずれは税収を財源に返済することになるので、現在の多額の借金は将来の増税を連想させる。それゆえ、消費刺激効果も限定的になる。しかし、ヘリマネはこうした経済的な規律を一切、取り払ってしまう。政府は中央銀行(日銀)に国債を引き受けさせてお金を受け取り、中央銀行は国債を永久に保有し続ける。
バーナンキ氏の定義にならえば、「マネーストックの恒久的な増加=借金を将来にわたって返済しない」点がこの政策のミソなのだ。

☆ アベノミクス以降の日銀と政府の関係をみていると、こうした懸念が現実のものになりかねない危うさがある。

☆ 中央銀行に独立性がなく、政府も健全財政にコミットしないならば
中央銀行による財政赤字ファイナンスが発生し、中央銀行は結局財政に追随して金融政策を決定せざるを得なくなる。どんなに中央銀行の独立性を与えられていたとしても、中央銀行は財政破綻を回避せざるを得ず、結果的に財政状況が物価を決める状況になる。これを「フィスカルドミナンス」(財政従属)といい、ドイツのハイパーインフレはまさにこれによって起きた。 日本はまさにフィスカルドミナンスに陥りつつある。


注 週刊東洋経済誌7/30号に株式「インフレ脱却に高まる積極財政論への期待」、為替「ヘリコプターマネー論に立ちはだかる民主主義の壁」、マクロウオッチ「低下するインフレ期待日銀追加緩和でも効果薄く」等の記事もあわせてご一読ください。*****************************************************************************
 
参議院選挙は与党の圧勝で終わった。安倍首相が秋の国会で20兆円の補正予算を検討しているとの記事を読んだ。有効求人倍率が1.5倍だと首相自ら選挙中演説していて、なお、一段の成長を確実にするためという。この後、朝日に「政策をチエック」という連載で、野口由紀雄教授、吉川洋教授等へのインタビュ-記事を載せていた。私はとりわけこの吉川洋教授の社会保障制度の全般を考えなけれなならないという主張には本当にそうだった思った。選挙になると低所得者に3万円支給するなどいうバラマキ政策をとっていては、民進党の野田元党代表が「馬鹿にするな」と発言していたが深く共感した。この記事を読んで私のごとき一市井の老人でもメランコリ-な気分になった。いま同時並行して「ロ-ま人の物語」第12巻を読んでいるが、今まさにローマ帝国が崩壊して行く過程を読んでいる。私の周りの人たちは野党がだらしないから強い拮抗力にならないという。そうかもしれない。でも育てなければ、育たない。「時流に乗る」ばかりでは、国家の重大事に進路を間違えるというのが歴史の教訓ではないか。政権政党がポピュリズムの先頭を走っていては野党は手も足も出ないというのが冷厳な現実ではないか。与党の中でこの状況を見通せる政治家が声を上げない限り、日本はとんでもない事態に陥ると思う。この記事を読んで、さすが東洋経済だ思った。以前は社説欄があったが今はない。石橋湛山に倣って社説欄を復活させて堂々の主張を掲げてもらいたいものだ。
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