山 紀 行
真名井沢北稜
 95年10月に川乗橋から川苔山に登った。古里におりる予定で赤杭尾根を歩いているとき偶然に真名井沢北稜の道に入った。この時は赤杭尾根のどこかに合流するくらいに考えていたが、エフを頼りにどんどん降りた。やがて鉄塔の基部に出た。右手に鉄塔巡視路の標識が見えるが、不安な気がしてとにかく早くおりたい。はるか下に林道がかすかに望める。こうなると尾根さえはずさなければ間違いあるまいと勝手に決め込んでくだる。本当はこれが危険なのだ。とにかく尾根を外さないように歩きだすが、踏み跡が次第に見えなくなる。植林地で切り落とされた小枝で道が分からないのだ。今度はとにかく右手の斜面をくだる。水の音が聞こえ出す。沢だ。とにかくおり切ると石積みを見る。「ワサビ泥棒立入禁止」の札を見ってすっかり安心した。ここをくだると川に出る。新しい丸太が二本、川にかけられている。川を渡り左岸の斜面をあがると林道に出た。ヤレヤレだ。人影の無い林道をどんどん歩く。途中、奥茶屋キャンプ場の標識を見て、アっと、驚く。ここは、そうだ。何度か歩いている大丹波林道だ。この時までどこに下りたのか分らなかったのだ。帰宅して奥多摩に関する資料を引っ張り出して探す。なんと真名井沢北稜という知る人ぞ知る道ではないか。ただ詳しい資料はない。赤杭尾根のあの小ピークが真名井沢ノ頭だ。そんなことで永く気にかかっていた。最近、「中央線の山を歩く」(藤井寿夫著新ハイキング社)を読んで、「送電線巡視路が取り持つ川苔山新ルート川苔山・真名井沢北稜」のガイド記事が目に留まる。4年前におりた鉄塔は何号なのか。こうなるととにかく確かめなければ気がすまない。そんなことで5月8日、15日、22日と3回出かけた。

 奥多摩で川苔山は人気の山だ。地形が複雑なせいか登山道も興趣に富んでいる。鳥屋戸尾根から眺めた川苔山は山襞も複雑に入り組んで見事な山容を見せていて成るほど人気の山だ思った。ただあまり歩かれていないのが真名井沢北稜だ。
青梅線川井駅下車、階段を降り青梅街道に出て鳩の巣方向に少し歩き、右へ大丹波川に入った所にバス停がある。日曜日は奥多摩駅から発車するバスをここから上日向まで利用することもできるが、歩いても40分ほどである。上日向の集落を過ぎて上流へ進むと真名井沢橋はすぐで、ここで棒ノ折山方面へ行く道と分れて真名井沢林道に入る。2、3分歩けば右手に東電標柱(左新秩父線39号、40号に至る。右38号に至る)(右、左は矢印で表記されている。)がある。上を見上げれば送電線が見る。斜面につけられた道をのぼると東電標柱(左40号に至る、右39号往復)の地点に出る。ここからは緩やかな道を登り、鉄塔40号、41号、42号と辿る。やがて植林地の中の緩やかな登り道で東電標柱新秩父線(左43号に至る、右42号に至る)を見る。東電鉄塔43号はこの道からはすこし北にある。植林の中で道が分り難いかもしれない。植林地を通過して平場になるところで右手、西北に踏み跡がありちょっとしたピークを登ってくだると東電鉄塔43号に出る。先ほどのピークの巻き道を戻ると東電標柱(43号往復、右42号に至る)があり、ぐるりと回って先ほどの道に戻る。この後、東電標柱(左43号に至る)を見る。矢印が逆向きだ。この標柱をもう一回見る。次第に登りとなり東電標柱(左43号に至る、右45号に至る)を見る。高度約950bの地点で黒い鉄製の土止めが打ち込まれた巡視路を離れて斜面を北西に登る(注3を参照)。右手の巻き道は東電鉄塔45号44号に向かう巡視路だ。このあたりはエフが幾つかあるので迷うことはない。登りきると尾根に出る。地図で1006b付近の地点だ。ここから平場となる。やがて斜面を登りきると尾根に出る。正面一帯は植林地だ。この尾根を登る。1168bの標石のあるピークに出る(注1を参照)。ここからはもう間違いない一本道だ。赤杭尾根の真名井沢ノ頭に出るコースタイムは2時間30分だ。  この真名井沢北稜を登りにとる場合は格別の問題はない。高度約950b付近の地点で鉄塔巡視路から離れるが、尾根をはずさないこと、高いところ高いところと歩けばエフもあり間違うところはない。問題はこのコースをくだりにとる場合だ。注意をしたい地点が3ケ所ある。

第1地点(注1)高度1168bの標柱のある地点
高度1168bの標石があるピークからは西にくだるが、尾根通しに北にくだると15分で鉄塔46号の基部に出る。ここからは最近巡視路が整備されたようで歩きやすい道だ。沢の詰めに出ってワサビ田に沿いにくだると大丹波川に出る。木橋を渡り林の中を少し歩くと登山道に突き当たり、直ぐに大丹波林道に出る。ここから川井駅まで2時間近くの車道歩きが退屈だが、時間によれば上日向からバスが利用できる。そんなことでスケープルートとして利用できる。

第2地点(注2)くだりにとる場合一番注意を要する地点
高度1168bの標石があるピークを20分位くだった地点(高度差で100b位)が一番要注意だ。南側に植林地が広がり西南に尾根が延びている。直進すると沢に向い行き止まりとなるのだ。ここからは東北の広い緩やかな斜面をくだる。勿論、エフもあるがので注意さえすれば問題がない。とにかくここをくだれば尾根がはっきりしてくる。

第3地点(注3)鉄塔45、44号に向かう地点
平場を通過して、尾根が次第に狭くなる地点で右手のエフに注意して斜面をくだる。東電標柱(45号43号に至る)をみるともう大丈夫だ。巡視路もはっきりしているので42号、41号、40号と辿り真名井林道におりる。もしこの東南におりるエフを見落として尾根を直進しても巡視路に突き当たる。この場合は斜面の巻き道を戻ると東電標柱(45号43号に至る)の地点に出る。また巻き道を戻らないでこのまま巡視路をくだると黒い鉄製の土留めが埋め込まれている道となり鉄塔45号に出る。このあとは斜面につけられた巡視路を辿ると鉄塔44号を経てワサビ田に出る。ここを20分もくだれ大丹波川に出る。木橋を渡り斜面を登ると大丹波林道に出る。ここに東電標柱(右46号に至る。左43、44、45号に至る)がある。

 コースタイム 
川井(バス12分)上日向(10分)真名井橋(3分)北稜取付点(東電鉄塔標柱)(20分)40号39号鉄塔分岐(30分)42号鉄塔(45分)935b点(10分)1002b点(30分)1168bのピーク(30分)真名井沢ノ頭(赤杭尾根合流点)

 費用
奥多摩秋川自由乗車券( 新宿から)1470円川井==上日向バス220円

新ハイキング誌2000年2月号せせらぎ欄に真名井沢北稜についての投稿がある。  「奥多摩、真名井北稜コースは本誌ても紹介されたか、自分の経験からもう少し。まず下りの場合の注意箇所1155b地点と10O2b地点いすれも木々にテープあるが右に下ること。真っすく下ると前者は46号鉄塔に行く。その先鉄塔巡視路があり大丹波林道650b付近に出られる。後者は45号鉄塔を経て大丹波川に下り立つが橋は11年11月現在流されてあり注意。対岸を登ると林道530付近に出る。次に、あえて前記鉄塔をめざす方は登りにとった方が歩きやすい。踏み跡はしっかりあるが現在地をよく把握して行動したい。自然林か多くとの鉄塔とも好展望。そうそつ熊対策を忘れずに。(23565 傍島夏生)

このガイド記事が若干の手直しで新ハイキング誌’01年9月号NO.551号に「秋晴れの山特選ガイド8コ−ス」「真名井沢北稜」として掲載されました。正直なところガイド記事を書くのはなかなか大変です。あやふやなことを書いて万が一遭難されてはと責任を感じます。そんなことで都合3回ほど歩いて書きましたが、市川編集長から「実際にくだってもみましたが、下山ル−トのポイントはとてもよく書けていると感心しました。」との葉書をいただきやれやれと肩の荷を下ろしました。(01/8/13)


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