山 紀 行
瑞牆山&金峰山

「瑞牆山(2230m)山頂は東西に60m、南北に10mの一大岩盤よりなる。三角点がある東峰、弘法岩のある西峰からなる。東峰には祠が安置され、山頂よりの展望がよい。全山、奇岩怪石でできているが、その岩峰中に洞ケ岩という洞窟があり、その奥の花崗岩に梵字(大日如来不動明王の意)が彫ってある。昔、弘法大師が霊場選定のためこの山に来て彫ったが、霊場としては八百八谷を要するため、谷数が不足するので、高野山にその位置をゆずったと伝えられる。」
(コンサイス山名辞典)

瑞牆山荘の横の駐車場に車を置き、富士見平を目指して登り出す。この里宮平での標高は1520mだ。辺りは白樺の林で、ここを抜けて山道を登ると40分で富士見平だ。早速、富士見平小屋を覗く。かなり大きな小屋だが、1週間遅れると泊まる人は少ないようだ。しかも管理人は不在だ。今日は富士見平小屋にザックをデポし、瑞牆山に登る。飯盛山の山腹を巻く道を歩き出す。樹々の間から山肌に巨岩をいただく異様な風景が見える。まるで南画というか、水墨画というか、そんなことを思わせる風景だ。水の枯れた天鳥川源頭を渡り、桃太郎岩から登り出す。岩場を急登に次ぐ急登で、程なくローソク岩に到着する。見上げるような大きな岩だ。ここから少し登ると黒森分岐だ。ここの樹林帯を右手に少し歩くと山頂に出る。あたかも舞台に上がるような感じだ。巨岩の上からは、正面に飯盛山、左手に大日岩、金峰山が見える。山頂から少し下の突起は五丈岩か。右手には八ケ岳が見える。小川山は舞台の裏手になる。展望を楽しみ、写真を撮る。見る見る間に黒い雲が広がり、ポッリと雨滴が落ちる。あわてて下山だ。山頂直下の樹林帯で雨具を着る。この後、雨が激しく降る。雨具はなにやら水漏れがする。ゴアテックスの機能を信じていたのでガッカリだ。天鳥川源頭を渡った所で、二人より先行して急いで往路を戻り、小屋で濡れた物を乾かす。この後、小屋の下にある水場に行く。水量は豊かで手が切れるくらい冷たい。小屋に戻り、明るい内に夕食だ。アルファ米に水を入れてガスで炊く。もっとも炊くとはいっても5分間で、あと5分近く蒸らす。レトルトのカレーを暖める。味はなかなかだ。食事が終わるとする事もない。6時半には布団の間に広げたシュラフカバーに潜り込む。昼間の疲れか、何時の間にか眠り込む。

「金峰山(2598m)奥秩父の代表的な山であり、山梨県側では「きんぷうさん」、長野県側では「きんぽうさん」ともよばれるが、近年「きんぷさん」に統一された。古くから信仰の山として知られていた。山名は大和の金峰山よりつけられたと思われる。山頂に五丈岩(御像石ごじょういし)があり、、遠望すると大黒様の姿ににているところから御像石と名けられたという。この岩の近くには篭堂があり、大黒天があったとも、蔵王権現がまつられていたともいわれる。山頂はハイマツと花崗閃緑岩からなる。石積のたくさんある賽ノ河原に山峰山祠が2つあり、ガンコウラン・コケモモ・ツガザクラ・イワカガミなどが咲き、アルペン的な山容をしている。かつては南方に続く八幡山から水晶の原石が産出された。」(コンサイス山名辞典)

朝、4時半頃、物音で目を覚ます。起きだして小屋の入り口に立つと、富士見平の名に恥じず、富士山が見事なシルエットを見せる。朝食後、小屋にザックをデポし、金峰山を目指して登り出す。大日小屋の上部に到着する。小屋と水場を覗いて見る。立て八丁の急登を登り切ると大日岩の下部に到着する。ここを登り切ると平らな樹林帯の道だ。展望は利かない。所々大きな老木が倒れた跡地には若い稚樹が育っている。シラビソだと思う。とにかく林相がいつも歩く丹沢とは違う。樹林帯を抜けると砂払いノ頭に出る。ここから一挙に視界が開ける。ここから山頂を見るとかなりの登りで、稜線が連なる。稜線には大きな石がごろごろしている。幾つもピークがあり、そのピークの片側は断崖絶壁だ。ガイドブックによれば千代の吹上げというそうだ。大きな石を注意して登って行く。東側は這い松が斜面を覆っている。金峰山小屋への分岐に到着する。ここから正面の金峰山の肩に小屋の屋根が見える。ここからひと登りで山頂と五丈岩の鞍部に着く。ここは平坦地で10人前後の登山者が休憩している。五丈岩は見上げるばかりだ。山頂の岩の上で食事だ。霧が風で流れ展望が開ける。すると間もなく稜線が霧に覆われ出す。1時間近くいたであろうか、いよいよ下山だ。稜線を降りた樹林帯で雨が降り出す。サブザックを開けると雨具が無い。小屋に置いて来たようで慌てる。M、Y両君をおいてひとり急ぎ下山だ。大日小屋辺りから雨があがり出す。富士見平小屋に到着する。小屋番の部屋の窓からラジオが聞こえる。挨拶をする。用事で下に下りていたそうだ。3人分の料金9000円を支払う。40分遅れでM、Y両君が到着だ。身仕度をして下山だ。瑞牆山荘で蕎麦を食べ帰路に着く。途中、増富温泉で一風呂浴びる。自動車で来る便利さを知るが、運転するM君はさぞや疲れる事だろうと思う。中央高速道に入ると大渋滞だ。雷鳴が轟き、荒れ模様だ。遅く家に帰りつく。それにしても今夏は日本百名山の五座(北岳、間ノ岳、富士山、瑞牆山、金峰山)に登るという大収穫だ。

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