丹沢の春 トウゴクミツバツツジ(2006/6/4撮影)

私の読書遍歴第3回(2022/4/16)

 本を読むということにはいろいろな側面があると思われます。学業の一環としてだとか、教養を向上させるためだとか、研究のためだとか、資格試験をうけるためだとか等々挙げられると思います。この将来資格試験を受ける、研究の分野に進みたいという学生の皆さんにとにかく読んでほしいと考える本を挙げます。

☆「知的生産の技術」(梅棹忠夫 岩波新書)
☆「発想法」(川喜田二郎 中公新書)

 私は大学を出て社会人になってから職業上の資格試験を受けけることを決めました。そんなことで清水幾太郎「論文の書き方」等々を読みましたが、何度かの失敗をした後になって問題はそんなことではない。もっと別のところにあることにおそまきながら気が付きました。

 試験に合格するためには論題を整理して体系的に理解することがどんなに大事なことかを知ったのです。それを気が付かせてせてくれたのが上記の二書です。これは試験だけのことではなく、この後の仕事の上でもとても役に立ちました。
 そんなことからこのHPの閑話休題に「後輩達への手紙 勉強の仕方」を書きました。試験に失敗した人間がもっともらしいことを書いてお笑い草だと軽蔑されるでしょう。それでも失敗をした人間だからこそ書けることとがあると信じます。

私の読んだ会計学に関する本

☆「簿記教科書」(沼田嘉穂)

 簿記会計の知識が皆無の状態で会計事務所に職を得ました。必死な思いでこの書を独習して簿記を学びました。学ぶにつれて実務とのあまりの懸隔に戸惑いました。後に判ったことですが日本の会計実務は入金伝票、出金伝票、振替伝票を主としたシャンド式簿記法(銀行簿記)がその大半を占めていたということです。これは日本に最初に簿記を紹介した福沢諭吉の「帳合の法」がシャンド式であったからです。後に私は証憑、現金出納帳(多桁式)、預金出納帳(多桁式)等を主とした多桁式会計を整備して、原先輩と新しく立ち上げた事務所の戦略的な道具として活用しました。詳細は「閑話休題に 後輩達への手紙 会計実務の基礎の基礎」を書きましたのでご一読をお願いします。

☆山下勝治「会計学一般理論」

 初めて読んだ会計学の理論書です。今、考えると典型的なドイツ的な会計学書でシュマ−レンバッハだとか、貸借対照表は「期と期を結ぶ連結環」等々鮮やかに思いだされます。

☆黒澤 清「企業会計原則」

 初めて企業会計原則なるものを知ってこれを読んだときは会計理論との位置付けが理解できず戸惑いました。よく考えれば企業会計原則は実務上の一般的な指針を表現したものであって会計理論ではないと考えれ問題ははっきりとします。

☆ペイトン・リトルトン「会社会計基準序説」

 中島省吾先生の独立した本は読んでいないのですが雑誌に載った論稿をフアイルして読みました。とても裨益することが多かったことを思い出します。中島省吾教授の論稿は、私如きが云うのもおこがましいのですがアメリカの「機能的」で経営活動を如何に把握し伝えるかという観点から書かれていてアングロサクソンびいきの私はわくわくする気持ちで読みました。その先生が、ペイトン・リトルトンの「序説」を評して学者が一生を掛けても惜しくなとと書いているのを読みました。このことがきっかけで勤めていた事務所の九州出張の帰途、皆さんと別行動で日向から川崎へ向かうフエリ−の船中で読みました。そんなことでこの書は記憶に残っているのです。

 高松和男教授が雑誌に書かれた論稿も私には目の前が開けるような気持ちでした。その原典となるワルプ?の書を読まなかったことが悔やまれます。その論講というのは企業に於ける経済活動を「財貨サ−ビスの流れ」とそれに対する流れである「貨幣の流れ」として把握し、それぞれの流れから滞留するものを費用性資産、貨幣性資産として認識するというものです。

☆中村忠「株式会社会計」

 1年通った東京経営計理学校で中村先生からこの書を教材に授業を受けました。大学で西山忠範先生の商法の授業が先生の学位論文「株式会社における資本と地益」を教材としたもので当時会計学の知識が皆無の私は戸惑ったことを思い出しました。そういうこともあって校外でも先生から教えを受けました。

☆狩野勇「原価計算」

 この書も東京経営計理学校で先生から直接教えを受けました。この書は徹底的にサブノ−トにまとめました。掲載されていた図版の間違いを見つけて先生にお知らせしたことを懐かしく思い出します。中村先生と同様校外でもいろいろと教えていただきました。

☆諸井勝之助「原価計算講義」

特殊原価について詳しく書いておられますが、なかでも「現在価値」という概念を明快に説明しておられますが、裨益するところとても大きなものがありました。この書は単なる原価計算の書ではないと考えます。

☆番場嘉一郎「原価計算論」

 この書はとても大部で原価計算の全体を表形式で表示するのです。読んだと云うより仕掛品の計算にとも便利だったという記憶があります。

☆岡本 清「原価計算」

 昔、私が勤めていた事務所で担当した製造業の某社が決算期に於ける製品、仕掛品の評価に特殊な原価計算法を採用していました。毎年5月の連休は一度も休むことなく会社に出てお手伝いをしました。岡本先生がこの書で特殊な原価計算法を紹介していますので興味を持って読みました。単なる原価計算の教科書ではありません。

☆日下部与一「会計監査詳説

 この書は当時会計監査の代表的な定本でした。

 週に4日事務所に出ていても雑用がないときは暇を持てあまします。歳も歳で山行も控えていいますし、「週刊東洋経済誌」はじめ政治経済関係の本も読まなくなり、もっぱらネットで東洋経済オンラインを読むだけでは経済や政治の問題には手が出ません。そうなると、昔、読んだ本のことをあれこれと思い出すのです。問題は現物の本を手にとって見ることが難しいことです。本は全て保存してありますが平積みで探し出すのが容易ではないのです。家内に見つかると読まなくなった本は処分をしてくださいとお小言を云われるのです。家を建て直して図書館のように書架に並べて眺めるのが夢でしたが叶わぬ夢で終わりました。次は経営書になります。
 
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