蘭の花

蘭の花(2020/3/22)


  この三連休も皆さん仕事をしています。昨年から声をかけていたI君が4月末か5月始めに着任してくれることになり、挨拶に来てくれました。そんなことで事務所にカメラ持参で出勤しました。

 事務所の応接室の蘭が次々と蕾を開いて見事な様子を見せています。
 ピクチャ-スタイルをauto、ニユ-トラル、スタンダ-トと替え、AF方式を一点AF、ゾ-ンAF、拡大ゾ-ンAFと替え、レンズも24から240ミリまで変えて撮りました。家に帰ってPCで見比べました。家内に声をかけて意見を求めましたが、厄介がられて、結局、全部載せることにしました。

 これだけでHPの更新も寂しいので毎日聴いているyoutubeの朗読の感想文を載せてお茶を濁すことにしました。

 私はこのところyoutubeで山本周五郎の「栄花物語 田沼意次の頃」を聴いています。物語は田沼意次と松平定信(八代将軍吉宗の孫)の政治的な対立を軸として展開します。皮肉なことに老いた田沼が改革派で若い定信が尾張紀井水戸の御三家をバックにした保守派の代表としての対立です。江戸期の経済は農業が大きな比重を占めています。中期からは商業資本、金融資本が次第に大きな力を持ってくるのですが、田沼はその商業資本金融資本に手を付けようとしたのです。

 朗読の第77回では薩摩藩の留守居役小松帯刀が田沼邸を訪ねて来ての用談から始まります。絹物会所を創設してその取引額に運上金を科したことが反発を買っていて、次いで現銀会所を創設するかどうかという江戸城白書院評定を控えての田沼の苦悩を知ることができます。


(この箇所は加筆です)
 第78回から第80回にかけては上州高崎城から農民一揆の知らせが届き緊急の評定が始まり、騒擾にどう対処するかというより、問題の本質がどこにあるかということから田沼意次が絹物会所開設の重要性を説明する。大商人達からの50万両献上の申し出は、成程、額は大きいが、幕府諸士の給料の1年分であり、それ限りでしかない。それよりも絹物一匹の取引額に2分5厘の運上金(今日の言葉で言えば売上税)を科すという方策のほうが大事だというのだ。商業資本が資本を蓄積していくその過程の中に幕府が入らなければ武家経済が持たないというのだ。もはや武力や権威では武士階級が持たないのだ。評定に出ている閣老達はこれが理解できないのだ。
 
第81回からは農民たちが江戸に押し寄せてきて千住で役人たちに阻止される凄惨な状況となる。この騒擾も運上金(売上税)を実質的にどちらが負担するかという、財政学でいう税負担の前転か後転かが背景にあるのだ。

 江戸期後期の財政改革の主眼は「入りの面」での新田開発もありますが、専ら「出を制する」ことでした。寛政の改革、天保の改革などが行われましたが、大きな成果を上げらず終わります。

 二宮尊徳や恩田木工等の事跡を知るときとても心を打たれました。信州松代藩の家老恩田木工民親の事跡を書いた「日暮硯」(岩波文庫)を読んだとき、その恩田木工の政治姿勢には大きな感動を覚えました。それでも松代藩の財政改革は大きな成果を上げることができなっかたのです。二宮尊徳の仕法(現代風に言えば経営改善の諸方策)などでは限界がありました。尊徳はのちには「入の面」、新田の開発に力をいれます。どうしても大きな限界がありました。農業を中核とした定常経済社会(経済成長率ゼロの社会)での限界です。

 この連続の朗読が途切れ途切れになるので、この合間には坂口安吾の「織田信長」、「梟雄 斎藤道三」、山本周五郎の「若き日の摂津守」、「備前名弓伝」等を聴きました。坂口安吾の2編は秀逸でお勧めです。

 山に行かない時でも私はこうして次々と遊ぶ種を見つけ出して暇つぶしをしています。この土、日家に居てもすることもなく居眠りをするか、つまらない堂々巡りの考え事をするかです。暇つぶしの一環で加筆をしました。山本周五郎の朗読を聴いていていろいろと考えさせられます。(2020/3/29加筆)
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