第377回山行報告 塔の岳(’10/1/30〜31)
 9時55分大倉から歩き出した。今日は永井荷風「つゆのあとさき」だ。1回15分の朗読を20回ZENに入れてある。何年か前に「断腸亭日乗」をこの大倉尾根で聴いているので今回は趣向を変えてこの20回の朗読を聴いてみようというわけだ。ただ山道で聴くにはふさわしいかどうかちょっと気にかかるが、これまた一興ならんと思った。1回15分で4回分聴いたら休憩と考えて歩き出した。
 観音茶屋を通過した。見晴小屋のベンチで一休みをした。どうも今一調子が乗らない。一本松のベンチでも一休みだ。堀山の家では何時ものように小屋に入ってストーブの前で暖をとらせてもらった。小草平では木道の工事が進んでいる。ここは裸地化がひどく、どんどん広がっている。木道が出来ると大いに助かる。花立山荘に着いた。13時20分だ。大倉から3時間25分だ。少し調子が出ないようだ。14時19分山頂に出た。ガスが出て富士山は見えない。尊仏山荘には立ち寄らず木の又小屋に向かった。18回目の始めの箇所で木の又小屋となり聴くのをやめた。17回として時間で4時間15分だ。30分くらいしてFさんが到着だ。前回の山行の折、丹沢山に向かう途中で行き合った方だ。彼から30日木の又小屋に泊りますとのメールがあったのだ。夜はランプの下でストーブを囲んで四方山話だ。

 翌朝は快晴だ。7時56分Fさんと一緒に小屋を出て塔の岳に向かう。山頂で鍋割山に回るというFさんと別れた。尊仏山荘に入る。客は誰もいない。花立さん一人だ。ひとしきり四方山話の後、何人かの客が入ってきたのをしおに小屋を出た。鍋割山稜から、小丸尾根をくだる。予想外に登ってくる人が多い。勘七の沢で一休みのあと、永井荷風「つゆのあとさき」18回19回20回を聴きながら歩いた。小説をいかなる基準で名作か否かを分けるのかは知らないが、人間の持つ多様な側面を問わず語らず教えたり気づかせるのが文学の本質だとするとこの「つゆのあたさき」はやはり間違いなく人間を書ききった名作なのだろう。山道を歩きながら聴くにはちょっと違和感があったが、とにかく聴き終えてからなんと言っていいか言いようがないが、名状しがたい気分となった。12時11分大倉に帰り着いた


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