第371回山行報告 塔の岳(’09/4/18〜19)
 2月から3月の一番忙しい時期に山歩きどころではないのでお休みをしていました。こうして一度、山行の間が開くと仕事が一段落してもなんとなく億劫となって今度はエンジンがなかなかかからない。ただこの期間は何度か渋谷の事務所から下丸子の自宅まで歩いて帰った。距離は11キロ強、平均して1時間40分前後で歩いた。ただ山道を歩くのとは違って面白みはない。もっぱら音楽を聴いて歩いた。今週末はお天気のようだ。家内にも土曜日は出掛けて1日いませんので山にでも行ってくださいと催促される始末だ。おまけにいつまでもHPの写真が冬景色の丹沢でも様にならない。かような次第で今週末は丹沢だ。

 10時25分大倉から歩き出した。登り切れるか、ふっと不安がよぎるが、何時ものスタイルでZENに収録してきた講演「今に生きる古代ギリシャ」を聴きながら歩けば大丈夫と自分に言い聞かせた。これは随分前にNHKで放送されたものだ。最近、直江兼続に関する文化講演会を2本、電車の中で聴いていたが、これをもう一度この大倉尾根で聴きたいと思っていたがダメになってしまった。というのは、先週、現在放送されている「関ヶ原合戦と直江兼続」の第3回をBossMasterからDドライブに移動中、Dドライブに異常があり、Dドライブのmp3フアイルが利用できなくなっしまったのだ。とにかく家で落ち着いて聴くことのできないものをこの丹沢大倉尾根で注意力を集中して聴くのが私の山登りだ。
 見晴小屋には11時19分に着いた。2か月近くブランクがあってもたいしたことはない。なんとなく気をよした。映画や演劇の話に始まり、ソクラテスだ、プラトンだ、アリストテレスだと講演もなかなか面白い。小林秀雄の講演をCDで聴いた時の、京、大阪の大商人達が伊藤仁斎の講義を聴いた話を思い出した。自分もこんな心境かと思わず笑ってしまった。
 12時40分堀山の家に着いた。小屋の前のハナモモが綺麗だ。気温が低いうえ、汗で下着が濡れているので寒ささえ感じる。早速に小屋に入ってコーヒーを頼んでストーブで暖を取らせてもらう。ナツコさんにお久しぶりですねと声をかけられる。ひとしきりストーブの前で小屋の中の様子を観察していたが、ナツコさんの人気は大変なもので丹沢で一番の人気の女性かもしれない。いよいよ出発だ。ここから小草平、花立山荘までがつらいところだ。ここからは趣向を変えて、「映画監督達の肖像」だ。この区間ももっぱら足元を見て講演を聴きながら登る。黒沢明監督論だ。映画も何本も見ているのでとにかく面白い。長い階段など苦にならない。花立山荘に2時11分に着いた。客は誰もいない。何時ものようにトン汁を頼んでおにぎりを食べた。十分休んだし、ここまでくればもう大丈夫だ。ここからは今村昌平監督論だ。この監督の手になる映画はほとんどみていないので格別の興味はなかった。3時3分山頂に出た。尊仏山荘に立ち寄らずすぐに表尾根をくだり木の又小屋に向かった。夜は同宿の若い人たちとランプの下でストーブを囲んで四方山話だ。中森さんの話では最近は山登りをする若い人たちが多いそうだ。

 6時30分起きた。お天気は良いが、風が冷たく強い。ただ歩くには最適だ。7時54分小屋を出て塔の岳に向かった。とにかく山頂に出て、不動の清水に下り顔を洗いたい。この表尾根では4頭の若い鹿に出会ったし、不動の清水へくだる斜面ではバイケイソウの芽吹きを見た。山頂に戻り尊仏山荘で一休みをしてから、再度、表尾根を下り三の塔、二の塔経由でヤビツ峠に2時30分に帰り着いた。このコースでは行者の鎖場を登りきって少し下ったところで、今を盛りと咲いている山桜を見た。「山桜人の縁にふれにけり」(篠田茂山)の句が浮かび、興奮気味に何枚もシャッターを押した。三の塔では赤い帽子をかぶったお地蔵さんが、よく来た、よく来たと迎えてくれた。毎回、毎回同じ所ばかり歩いているが、やっぱり来てよかったと思った。(表紙に載せる写真の選択に困りました。あれもお見せしたい、これもお見せしたいと欲張った末、出来の良いものは全部載せることにしました。レンズはタムロンの28-300ミリを使用。)

戻る