第351回山行報告 磐梯山(06/8/26〜27)
裏磐梯側から望む磐梯山(スライドショ−お楽しみください。)
  8月4日から我が家で預っている孫もどきの智紀(小学5年生、姪の子)を母親に会わせるため二泊三日で広島江田島に行ってきた。彼の地ではかって海兵の生徒達が登ったという古鷹山に登る積もりでいたが、暑くて暑くてそれどころではなかった。
 この週末はかねてからの懸案の磐梯山に登ることにした。新幹線を利用して9時10分に磐越西線猪苗代駅に着いた。タクシ-を利用して登山口の一つの八方台に向かったが、車中で運転手さんに登りは八方台、くだりは裏磐梯のコ-スと話すと、最近は八方台からの登山者が増えているという。磐梯山の登山道では一番楽なコ-スで2時間30分で山頂に立てるとなるとむべなるかなだ。最初は前泊して猪苗代コ-スを登り、南から北に縦断するコ-スをとる予定でいたが、宿の予約をとる面倒さから、結局、東京を早朝発って登ることにした。このコ-スが一番都合が良かったのだ。帰りは裏磐梯でひと浴びして、今日中に帰れれば帰るし、帰れなければどこかに泊ると家内に言ってきたので気楽なものだ。
 運転手さんの話の通り八方台の駐車場は満車でマイクロバスや観光バスも見える。百名山ツア-やら近くの温泉に泊まって登ろうという人たちだろう。案内板の前にこれから出発しようとしている中高年者の大勢の一団がいる。皆さんが話している言葉から判断すると関西からの人たちのようだ。案内板を写真にとって9時58分に歩き出した。樹林帯(ぶな)の道で展望はないが歩きやすい。天候も快晴とはいえないが、一部青空も見えるしまずまずだ。風が冷たいので気持ちがいい。中の湯、裏磐梯への分岐と順調に通過してきた。このコ−スでもきっちりと間隔を取って休んだ。11時40分に花畑コ-スと弘法清水コ-スの分岐に出た。どちらをとっても同じなようでお花畑コ-スを歩いた。南正面に磐梯山の頂上を望める地点に出たが、生憎、山頂に雲がかかって見えない。中腹に小屋が見える。ひと登りで小屋のある平地に11時53分着いたが、大勢の人が休憩している。ここには小屋が2軒あり、弘法清水は岡部小屋の真ん前だ。10人前後の人が並んでペットボトルを満たしたいる。水の出は細いが山中にこういう水場があると、ほっとする。時間も時間で丁度ここで食事だ。ひとしきり休んでから12時20分登り出した。
 12時50分に山頂に出た。南側は雲で展望は利かない。北側は眼下に樹海が広がり、湖沼群が雲の切れ間から望める。東側に起立する櫛が峰はなかなか見事だ。深田久弥日本百名山によれば広い意味での磐梯山はこの主峰と目の前の櫛が峰が間隔が広い双耳峰をなしているので猪苗代湖から眺めるのが一番だそうだ。いつまで待っても南側の雲は切れそうもない。13時13分下山開始だ。くだりは20分足らずでおりてきた。弘法清水小屋でジュ−スを飲んで裏磐梯への下山路について聞いてみると、主が外に出てコ-スを教えてくれる。川上登山口にくだる道をとり火口原にある分岐で北西の道をとればスキ-場に出るという。携帯している昭文社の地図の通りで格別の心配はなさそうだ。13時58分稜線上の分岐で中年男性二人組に追いついた。ひとしきり立ち話だ。八王子から来たとかで右手の猪苗代への道だそうだ。私は左手の火口原にくだる道だ。くだるにつれてびっくりした。山容がまるで違うのだ。西から北東にかけて荒々しい斜面が目に入る。上から見ていたのとくだるにつれて目に入る景色の印象がまるで違うのだ。左、西側には断崖峰が起立している。ここにあった小磐梯山の山体が1888年7月の大爆発で吹っ飛び、溶岩が北に向かって流れたのだから人的物的被害は大変なものであったろう。この大爆発で「山北数里の地は変じて高原となり、川は堰かれて幾つかの湖を生じた。」(深田久弥日本百名山)のである。次第に緑が増してくるがどれも背が低い潅木の類だ。やがて火口原の端の分岐に出た。東北に向かう道が川上登山口に向かう道、北北西に向かう火口原を縦断する道が裏磐梯スキ-場口に向かう道だ。ニ方向ともロ-プが張ってあり道に迷う心配は無い。時折、振り返って眺めれば爆発のすさまじさに驚くばかりだ。磐梯山の表と裏がこんなに一変するとは驚いた。このコ-スを選択して本当によかった。やがて白い砂礫の一寸したピ−クを登る辺りから松類の木だろうかがみえだす。樹木の知識が無いのが残念だが、生態学で言う遷移の過程を見るようで興味深い。何枚も写真を撮った。こういう樹種が最期にブナ(極相林)に変わるのだろ。林の中では小さな赤茶けた沼を見た。鉄分が多くて酸化してこういう色になるそうだ。やがて15時12分登山口のスキ-場の上に出た。緩やかな斜面を下り、ゲ-トからは車道歩きだ。これが気分を害する最たるものだが歩かなければ帰れないのだから仕方が無い。16時10分バス停に帰り着いたが汗でズボンもシャツもビシヨ濡れだ。着替えを持っているので、なんとか風呂に入って着替えたい。こんな汚れた格好では裏磐梯高原ホテルや猫魔ホテルは立派過ぎて敷居が高そうだ。適当な入浴施設が見つからない。バスに間に合わず、タクシ-を利用して猪苗代に戻るくらいなら泊ったほうが良いと思った。バス停前の物産館でお土産屋の主に宿のことを尋ねたらたら、娘さんが、すぐ電話をして近くのペンション「ハイジ」を紹介してくれた。ここまで車で迎えに来てくれるという。この手が一番だ。ペンションで風呂に入り、コインランドリ−で洗濯をしてさっぱりとした。夕食はフランス料理でおいしくいただけた。翌日は五色沼ハイキングコースの一端まで車で送ってもらってのんびりとバス停まで散策路を写真を撮りながら歩いた。山の帰りにこうして寄り道をするのを私は「帰りがけのお駄賃」と称しているが、今回もなかなか楽しめた。

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