第348回山行報告塔の岳(06/6/4)
 土曜日5時に家内に何度も起こされるが、起きれない。寝つきが少し悪かったくらいで、格別、疲れているわけでもないが、山行の間が空いて、お天気も良くないとなると気がのらない。8時過ぎに起きたが、家内には無理してまで山歩きをすることはないのではと言われてしまった。明日、日曜日、日帰りで出かけようと決めた。
 7時33分大倉から歩き出した。今日、聴くのはNHKで放送された作家永井路子さんの連続講演「戦国武将の素顔毛利元就の手紙を読む」だ。歩き出して直ぐに横断幕を見てアッと思った。今日は丹沢ボッカ駅伝大会だ。騒々しくなって登山道は大丈夫だろうかと危惧したが、この時間では大丈夫だろう。何時ものペ−スでゆっくり歩く。登山道も格別の変わりはない。変わったことといえば空身の若い人たちが4,5人位、何組か追い抜いていった。1回目が終わり、2回目に入った。面白くてどんどん引きずり込まれる。そんなことで疲れは感じない。何時ものペ−スで歩いてきた。雑事場ノ平に出たが、最近はここから少し先の見晴茶屋で休憩しているので通過した。8時24分に見晴茶屋に着いた。ここが第一の中継点のようで大勢の人たちがいる。端っこのベンチで一眠りした。20分位だが、これですっきりとした。ここから3回目だ。講演の内容は明快で面白い。いつも閉まっている駒止茶屋も大勢の人がいる。ここが第2の中継点のようだ。何時ものようにここは通過だ。まだ選手が登ってくる気配がない。登山道も何時もと変わりない。平場となったあたりでゼッケンを付けた選手が一人追い抜いていった。20キロの石ころを詰め込んだ袋を背負って走るのだからご苦労さんとしか言いようがない。もう少し賑やかと想像していたが、前後の差が相当にあるのだろう。こんなに人影のない山道を走っていくのを見るとちょっと拍子抜けだ。しばらくするとまた一人、それからかなり間を空けて続いて一人と、結局、3人が追い抜いていった。9時59分に堀山の家に着いた。ここが第3の中継点のようで、ここも人が多い。ここでコ−ヒ−を飲んで休憩した。小草平ではちょっと休憩しただけで直ぐに歩き出した。花立山荘手前の階段の登りでは選手の前後を7,8人のサポ−タ−が取り囲んで、頑張れ、頑張れと声援を送っている。この連中が追い抜いていった後を何時ものペ−スで登っていった。10時58分に花立山荘に着いた。ここがゴ−ルのようだ。大勢の人がいるが、山荘内は閑散としている。隅のテ−ブルで一人がノ−トパソコンで記録をしているようで、客は私だけだ。トン汁を頼んで食事をした。6回目を聴き終わったので今日はこれで終わりだ。花立ではガスが流れて、鍋割山稜、塔の岳は見えない。このあたりもすっかり新緑におおわれて、樹間には淡いトウゴクミツバツツジがちらほら見える。11時55分に塔の岳山頂に出た。ガスで視界は利かない。尊仏山荘でコ−ヒ−を飲んで一休みだ。ここも客は少ない。花立さん、大野さん、若林さんも手持ち無沙汰なようで、ひとしきり花立さんと雑談だ。今年はシロヤシオツツジはどこも駄目なようだ。昨年は丹沢のいろいろな場所で見事に咲いたので、ここ当分は期待できないだろう。ミツバツツツジは平均的に毎年花を付けるが、シロヤシオツツツジは見事なくらい周期性が認められる。丹沢を歩いて16年になるが、シロヤシオの見事な花を見たのは3回だ。5年位の周期か。この後、表尾根をくだった。ガスが一瞬に覆って視界が利かなくなる。ここも稜線のあちらこちらの樹間にミツバツツジを見る。木の又小屋で小休止をしたあと書策新道経由でくだる。背戸の沢も新緑が見事だ。水場でひとしきり座り込んで景色を堪能した。沢から離れて少し歩いたところでレンゲツツジを見た。やっぱり今日登ってよかったと思った。これだから止められないのだ。3時10分に戸沢出会におりた。休憩舎で一休みをしてから、最近、放送されたNHKの文化講演会を聴きながら歩き出した。講演者の佐木隆三さんの本は読んだことはないがお名前は知っている。ノンフィクッションの作品「身分帳」が世に出るまでの過程と主人公との交流を語られたのだが、主人公が佐木さんの留守中に自宅に、お坊ちゃんに食べさせてくださいといって法事で出た落雁を届けられたくだりでは思わず涙が出た。こういう人がいて、こういう人生もあったのだ、と深い感動にひとしきりひたりながら歩いていた。4時40分大倉に帰り着いた。
今日はとにかく充実した一日であった。新緑も見事であった。永井さんの講演には深く考えさせられた。佐木さんの講演には感動した。9時間歩いた。遠くに行かなくてもいい。近場の丹沢でもこんなに充実した一日が過ごせるのだ。やはり山歩きは止められない。(新緑の丹沢をスライドショ−でお楽しみください。レンズはタムロンの28〜300ミリを使用しました。) 


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