第335回山行報告 大雪山(’05/07/22〜24)
大雪山写真集
私の夏山シ−ズンの幕開けは大雪山だ。大雪山といっても大雪山という単体の山があるわけではなく旭岳、北鎮岳、黒岳、北海岳、小泉岳、間宮岳、桂月岳等の一連の山群の総称だ。

22日 層雲峡YH泊。

23日 6時始発のロ−プウエイ、リフトと乗り継いで黒岳七合目に着いた。ここで朝食を食べて7時登りだした。黒岳、雲の平、お鉢平、北鎮岳(往復)、間宮岳、旭岳と縦走して4時20分姿見ロ−プウエイ駅に着いた。

 このコ−スで一番記憶に残るのは間宮岳をくだってからの旭岳の登りであった。最低鞍部でもう夏道が雪渓で途切れている。標識もないしガスで視界は利かない。時々風が吹いてガスが吹きはらわれると上部が見える。見えると言っても何処までも雪の斜面だ。かすかな踏み跡がついている。登山靴で斜面を蹴り込んでは登る。ガスが掛かって辺りが見えない。不安でとにかく上に上にと休憩もなしに1時間登った。やっと石ころ交じりの斜面が見えた。雪渓を離れて足場の少ない滑りやすい斜面をジグザグに登ると岩にペンキのマ−クを見た。途端、緊張がいっぺんに解けた。この後、先ほどの緊張はどこやら余裕で山頂に出た。旭岳山頂では空は青空がのぞいているがガスで視界は利かない。でもお天気に恵まれたのが何よりであった。長いくだりも紋別からこられたというご夫婦と話をしながら歩いたので退屈をしなかった。旭岳温泉大雪山白樺荘YH泊。

24日 旭川空港5時20分発の便を予約してあるので時間も充分ある。朝食後、ザックを預けてロ−プウエイを利用して姿見平の一帯を2時間近く散策した。この地点ですでに森林限界をを超えていてハイ松が見られし、雪渓もあちらこちらに残っている。姿見の池も3分の2は雪に覆われている。至るところに花が見えて素晴らしかった。とりわけチングルマが一面に咲いている様子は私の腕ではとてもお見せできないのが残念だ。旭岳はほんの一寸見えただけでほとんどガスの中であった。

 山中の休憩で一人で座っているとき父の最期の任地であった北竜町から時折この山嶺を眺めたことを思い出して、いまそこを歩いているんだといささかの感慨に浸った。私は’46年7月に母と弟と3人で満州奉天(中国瀋陽)から旭川に引き揚げた。駅近くの平和通りにあった洋裁店に母が裁断師として働いていだが、今、旭川駅前に立っても思い出せるものが何も無いくらい大きな変貌を遂げている。’47年4月旭川市立中央小学校に入学し、7月父がシベリアから帰還して間もなく羽幌へと移った。その後、浜頓別、北竜、東京と移り住んだ。
 旭川駅前の喫茶店でコ−ヒ−を飲んでぼんやりと時間を潰したが、様々な思いが脳裏をかすめた。格別の取り得のない平凡な人間でも生きてきた64年という歳月にはいろいろなことがいっぱいある。今回の大雪山山行は3年前の利尻山行と同様私のセンチメンタルジャニ―とも言うべき山行となった。
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