第326回.山行報告 丹沢主脈縦走(05/01/8〜9)
9時15分大倉から歩き出した。今日は太平記だ。家や電車の中で聴いていたがこま切れでなんとなく物足りない。この大倉尾根で通して聴こうという寸法だ。
 昔、「忘れえぬ日本の歌130」というLPレコ−ド全集を何度も聴いていた。亡くなった母も懐かしがって聴いていたが、大半が戦前の尋常小学唱歌だ。この中の「鎌倉」、「桜井の決別」、「児島高徳」、「大塔宮」、「四条畷」等は太平記がその原典だ。歴史の背景に格別関心があったわけではないが、物珍しさもあり、なにやら郷愁をそそられて聴いていた。とりわけ「青葉の笛」は今でも時折口ずさんでいる。太平記は全40巻もある大著でとても読みきれるものではないが、新潮カセットブック日本の古典はその幾つかの章を朗読井川比佐志、解説永井路子でテ−プ2本(170分)に収めている。序文の「蒙ひそかに古今の変化を採って安危の来由をみるに、覆って外無きは天の徳なり。明君これに体して国家を保つ。のせて棄てること無きは地の道なり。良臣これにのとって社稷を守る。もしそれその徳欠くるときは、位有りといへども持たず。」から圧倒される。御醍醐天皇御治世の事付けたり武家繁盛の事、俊基朝臣再び関東下向の事、備後三郎高徳が事、稲村ガ崎干潟と成る事等、なかなか面白い。とりわけ高時ならびに一門以下東勝寺において自害の事に記述されている自害の凄絶さには驚くばかりだ。
 花立山荘に入って時計を見ると12時17分だ。所要時間は3時間だ。3時間びっしり聴いたことで充実感がある。トン汁を頼んでおにぎりを食べる。・・・ここからは倍賞千恵子抒情歌全集1を聴きながら気楽に歩き出す。この人の歌声は何時聴いてもいい。馬の背の辺りから雪道となる。・・・1時10分塔の岳山頂だ。人が意外と少ない。尊仏山荘でコ−ヒ−を飲んで小休止だ。1時30分出発だ。塔の岳のくだりからは雪国の様相だ。冬山気分が味わえるとは嬉しい限りだ。・・・・日高を過ぎた地点で小休止をしていたTさんに会う。ひとしきり立ち話だ。この後、竜が馬場まで一緒に歩く。じっとしていると寒いのでここから引き返すというTさんに別れを告げて草々に歩き出す。・・・・丹沢山だ。11月に見たプレハブや重機がすっかり撤去されトイレが完成している。今夜は新しく建て替えられたみやま山荘泊まりだ。木の又小屋や尊仏山荘で時々顔を合わせるXさんがいる。彼も今夜は泊まりだそうだ。やがて到着されたKさんやYさんと夕食までひとしきり四方山話だ。山小屋で過ごすこんなひと時がとても楽しい。それにしてもこの小屋は絶好のロケ―ションにある。初日で塔の岳を越えて蛭が岳までとなるとなかなか難儀だが、この小屋に泊まれば余裕で主脈縦走ができる。そんなことで久しぶりに主脈縦走を計画した。雪道の状況次第では八丁坂の頭から東野にくだってもいい。
 翌朝、快晴だ。KさんYさんと一緒に7時に小屋を出る。出発前に小屋のお手伝いの女性が玄関前で記念写真を撮ってくれた。丹沢山をくだってすぐ登った小ピ−クから朝焼けの富士山がみえる。素晴らしい一日の始まりだ。・・・・不動の峰の大きな木の幹の間から富士山が見える。目を転ずれば相模湾がキラキラ光っている。左手の小さく黒い影は江ノ島だ。Kさんが大島、神津島も見えるといっている。私は視力が落ちている所為かしかとは分からない。行き逢った方からあれは筑波山ですねと話しかけられても残念ながら目が悪くてといい訳をする。冬のこの時期の丹沢の最大の楽しみはこの眺望かもしれない。次回は小さな双眼鏡を用意してこようと思う。・・・・蛭が岳山頂だ。ここでも檜洞丸を前景に富士山が素晴らしい。今日はこうして一日中富士山が見える。同僚から聞いた話では、彼の島根にいるお姉さんが一度富士山を見みたいというので、昨年、東京に来たおり箱根に宿を取ったのだかお天気が悪くてかなわなかったいう。こういう人になんとかこの富士山を見せてあげたいものだと思った。いつも見ていると「偉大なる俗物め」等と悪態をつくが、久しぶりに眺めるとやっぱり冠雪の富士は言う事がないと脱帽だ。・・・・蛭が岳の北面は雪がかなりある。アイゼンの代わりにチエ−ンを着けているが、くだりでは最適だ。途中で小屋に向かう蛭が岳山荘の管理人の杉本さんに会う。新年のご挨拶だ。・・・・姫次だ。私が先着したが、直ぐにKさん、ひとしきりしてYさんが到着だ。ここで食事だ。ここではカラマツの間からの富士山が素晴らしい。ずんぐりとした蛭が岳も望めて、本当に今日はすばらしい一日だ。このコ−スではこれで富士山とお別れだ。この後の長いコ−スもKさんと話しながら歩くので退屈しない。焼山で少し遅れてYさんが到着だ。じっとしているすぐ寒くなるのでKさんと二人で先に出発だ。・・・焼山登山口に到着だ。しばらくしてYさんがこられる。帰り着いた時刻は失念したが3時38分のバスには余裕で乗れた。YさんKさん、今日は本当に楽しい山歩きでした。有難うございました。また丹沢のどこかでお会いできる日を楽しみにしています。
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