第307回山行報告 天狗岳(’03/10/11〜12)
 9月に北八が岳の池巡りで歩いた折、中山峠で天狗岳の威容を見たが、「帰りがけの駄賃」でちょっと寄り道をして登るというわけにはゆかず黒百合ヒュッテ経由で唐沢鉱泉におりた。この唐沢鉱泉の前から取り付く天狗岳西尾根も気に懸かる。そんなことでこの連休に長野新幹線を利用して登山口の稲子湯に着いた。バスで一緒だった同年輩の方としらびそ小屋まで四方山話をしながら歩いた。
 今夜はこの小屋に泊まりだ。1時前からのんびりするのも悪くない。小屋のスト−ブの前に座ってコ−ヒ−を飲んで皆さんの話を聞くともなしに聞く。このあと近辺を散策して写真を撮った。小屋の裏手にはリスが来ている。望遠レンズでなければ無理だろう。小屋に入って窓ガラス越に餌場に来ているリスを撮ったがどうもうまく写ってはいない。しばらくするとカモシカが来ているとの声で外に出てみると池の向こう側にいてじっとこちらを見ている。このしらびそ小屋はみどり池の傍らに位置していてなかなか風情がある。池の水面には東天狗が映っている。稲子湯からここまで2時間少々で格別の登りはない。そんなせいか女性が多く山小屋には珍しく若い女性も多いように感じた。
 夜、雨が降りだした。ネットで見た天気予報では土、日は何とか持ちそうで月曜日からは下り坂だ。雨音を聞きながらいつの間か寝入ってしまった。朝起きると雨はあがって空は少し明るい。何とか今日は持ちそうだ。ただ残念ながら昨日見えた東天狗はガスの中だ。6時50分小屋を出た。雨が降った所為かシラビソの林床も落ち着いて好ましい風情をみせる。中山峠まで前後に人影はなく一人歩いた。こういう森林の佇まいが北八つの魅力なのだろうと感じた。中山峠の最後の登りは明るく開けた斜面を右手に見てつづら折れに登ってゆく。中山峠に出た。誰もいない。時計を見ると8時5分だ。先月ここで東天狗の威容を見たが今日はガスの中で風の音ばかりすごい。岩陰で風を避けて小休止だ。もう少しのんびりとしても思いながらも一人ではすぐに歩き出す。大きな岩のごろごろしたところを歩いていると黄色の目立つヤッケを着た人が追い越していった。南から北にガスがどんどん流れてゆく。黄色をまとった樹海が南側に広がる。小さな池と屋根らしきものが見える。ミドリ池にシラビソ小屋だ。上からにぎやかな声がして空身の15,6人の一団がおりてくる。黒百合ヒュッテに泊ってスリバチ池の方から回ってきたようだ。黒百合ヒュッテの様子を聞くと大変な人であったという。10月の連休で絶好のロケ−ションにある小屋としてはやむを得ない事だろう。登りだすがガスで次第に見えなくなる。東天狗の山頂はガスに覆われ風も強く長居はできない。そうそうに西天狗に向かう。広い鞍部を歩いて一登りすると西天狗の山頂だ。時計を見ると9時35分だ。西尾根を登ってきて高見石に向かうという4人組みにどこから登ったのかを聞かれてシラビソ小屋を6時50分に出たというとびっくりしている。一人で歩くとなるとどうしても早くなる上、こうガスで風が強いとなるとすることもなくどんどん歩いてしまう。西天狗からは西尾根を下る。最初は岩のごろごろした斜面をひとしきりくだると樹林帯だ。ここからは長い。くだるにつれて登ってくる人たちに会いだす。結構このル−トを登る人がいるのだと感心した。尾根を離れて北側の斜面をくだりだす。やがて唐沢鉱泉の分岐の標識を見てからの道は石がごろごろして歩きにくいことこの上もない。唐沢鉱泉の前に出た。12時を少し回っている。入浴料700円の看板を見て心が動くがとにかく渋の湯までゆきたい。建物の裏手の一段上に「渋の湯八方台」の標識が見える。ここから1時間だ。この尾根の向こう側が渋の湯だろう。それにしても一度おりてからもう一度登るとなると結構物好きなものだ。ちょうど30分位登ったであろうか「辰野館、渋の湯、黒百合ヒュッテ、唐沢鉱泉」の十字分岐の標識を見る。これで納得だ。先月はここまでくだる予定が早々と尾根を離れたようだ。渋の湯御殿湯で一浴びした。バス停でザックをつめ直してバスを待つ。バスの時間まであと小1時間はある。客を送ってきたのであろうか空車のタクシ-の運転手さんに声を掛けられ、居合わせた4人で相乗りをして茅野駅にでた。3時19分の特急で帰京した。もうそろそろ丹沢モ−ドに切り替えなければと思いながらもほかの山域に心が動く。
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