304.03/8/2〜3月山
いよいよ’03年の私の夏山シ−ズン開幕だ。第一弾は出羽三山のひとつ月山だ。
 「出羽三山とは、羽黒山、月山、湯殿山のことだが、羽黒と湯殿は山として論じるに足らない。ひとり月山だけが優しく高く立っている。・・・・・月山の名の起こりは、半輪の月の形からではなく、その山を仰ぐ平野の人々が彼等のもっとも尊崇している農業の神、月読尊を祀ったからである。しかし、その心の底には、やはり月のように優しい山という感じがあったに相違ない。・・・羽黒から月山に登り、奥院の湯殿に参拝するのが、昔からの順路であった。芭蕉は奥の細道行脚の途次、この三山に巡礼した。」(深田久弥「日本百名山」)
 梅雨明け宣言を待ちきれず土曜日、東京から新潟経由で鶴岡に向かった。新潟までは居眠り半分、新潟から鶴岡は横浜の方と隣り合わせとなり四方山話に花を咲かせて車中退屈をしない。鶴岡駅から1時50分発の月山八合目行きのバスに乗った。羽黒山神社までは道も広いし時間通りだ。ここは休憩所もあるし、観光バスも道の向こう側に2,3台駐車している。運転手が今日は相当車が登っていて時間も遅れると思うのでトイレに行かれる方はここで済ませてくださいとのことで臨時停車だ。くだって来る車が多く狭い道で行き合うので大変だ。なるほど誘導係が乗り込んでいる訳だ。大型バスも何台も降りてくる。当初の予定では3時30分に八合目に着けば、小屋まで2時間の行程だ。5時半ころまでに小屋に到着出来ると胸算用していたが、どのくらい遅れるのか心配になったが、幸い20分遅れで到着だ。両側に車がびっしり駐車していて観光バスも何台か見える。同じバスに乗って来た人達は駐車場の少し上にある羽黒山神社の御田が原参篭所(宿坊)に泊まるようでのんびりしているがこっちはそうは行かない。
芭蕉は羽黒の別院から、深田久弥は六合目から歩き出したのだが私は八合目からだ。最初は木道だ。緩やかな傾斜の草原であちらこちらに黄色い花の群落がみえる。ニッコウキスゲだ。やがて山道となるとくだってくる人がにわかに多くなる。大体が白装束で金剛杖を持っている。菅笠をかぶっている人もいる。登っているのは私一人のようで後続が見えない。やがてくだってくる人もいなくなり静けさが訪れる。振り返ってみればところどころに雪田が広がりなにやら見たことのあるような風景が広がる。そうだ。WINDOWSXPのデスクトップの画面だ。仏生池小屋に5時を少し回るころに到着した。客は一組のご夫婦だけで早速ご挨拶をして四方山話だ。新発田から来るという7人組がまだだとかで小屋番がしきりに外を気にしている。やがて日が落ちてあたりが暗くなった。大丈夫だろうかと心配していたら7時近くに到着だ。夜は強い風が吹き出し気温も16度だ。食事の後はすることもないので8時過ぎには早々に布団にもぐりこんだ。
 翌朝5時ころから騒がしくなる。下の宿坊に泊まった人達がこの小屋で朝食のようだ。出発前にコ−ヒ−を頼んで小屋の息子さんに大学で同じゼミにいたK君のことを尋ねてみた。小屋の息子さんは知っているという。休暇村の近くにロッジを建てて悠々自適のようだ。こんなことを尋ねたのも鶴岡に来てから「甲子園出場おめでとう羽黒高校」のステッカ−を何度も見たのでK君のことを思い出したのだ。彼は卒業後地元に帰って羽黒高校の先生になったのだ。アコ−デオンが上手でゼミのコンパの時は歌唱指導をしていた。これまで高校野球も別世界のことと思っていたが思いがけないことに母校も都立勢としは3校目の甲子園出場だ。6時30分小屋を出発するが、ガスで視界は利かないし風も強い。ただ気温は丁度よい。道はよく整備されていてとても山の道とは思えない位だ。そんなことで休みもなしにどんどん歩いたのであっという間に月山山頂に着いた。500円を払ってお払いを受け石垣で囲まれた社殿のところに行ったが15,6人の白装束の一団が神主さんの祝詞を受けていたので早々に退散した。くだりは人影はない。相変わらずガスて視界は利かないが風は収まってきた。鍛冶小屋を通過したあたりから登りの人達に会う。福島県の矢吹から来たというパ−テイ−と立ち話をしたがくだりとなると足は軽い。くだるにつれて南側の斜面には雪田が広がる。姥沢に直接くだる道はこの雪田を3箇所ほど横断するそうだ。牛首から姥が岳、湯殿山に行く道では5,6メ−トル登山道に懸かっているだけだ。湯殿山へ向かう分岐近くで小屋で同宿のご夫婦に追いついた。姥が岳に向かうご夫婦に別れを告げた後歩き出すが人影はない。前方左手には湯殿山の特徴ある山容が見えるがここには登り道はなくこの下の谷川沿いまでくだるのも湯殿山といっているのだ。沢の出会いだ。冷たい水が流れている。ここでペットボトルを満たした。このあたりから同じ方向に向かう人に会いだす。ひとりとなるとどんどん追い越す。やがて西南に湯殿山が望める施薬避難小屋に着いた。ここも7,8人の子供連れの家族が休憩している。小休止をしていると先ほど追い越した年配の人達が到着だ。倉敷から来ているとかで緑の深さにこういうところは岡山にはありませんと口々に言っていた。この小屋の少し先から急降下が始まる。10メ−トル位の鉄梯子が何段か続く。やがて石ころだらけの沢をかなり下る。ここを登りに取るとなると相当なるアルバイトを強いられる思う。簡単なハイキング程度の山と思っていたがこのあたりの様子を見るととてもとてもそんなものではなさそうだ。おり切って沢沿いに少し歩くと湯殿山奥の院だ。500円を支払ってお払いを受け覗いてみたが谷川の大きな岩から温泉が出ていてこれが御神体だ。この後右岸の参道を登って広場からシャトルバスで大鳥居のあるところまでくだった。ここは大きな駐車場で、ここに車を置いてシャトルバスで上に向かうのだ。交通整理の人に温泉施設のことを尋ねるとワゴンタクシ−で下の湯殿山ホテルまで行かなければと教えられた。入浴してからホテルの前にある釣堀のコンクリ−トの上でザックを枕に2時間近く昼寝をした。急ぐ旅ではない。いい気分だ。2時21分発の高速バスで山形に出て新幹線で帰京した。  


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