297.2003/1/11〜12丹沢山
大倉から歩き出す。このところ大倉尾根ばかりなので今日は書策新道経由で木の又小屋だ。滝沢園のキャンプ場から水無川を渡り戸沢出会まで1時間40分林道をひたすら歩く。お天気はいいのに人影はない。戸沢の休憩舎で一休みだ。15分ほどのんびりとしたが誰も来ない。書策新道を歩き出す。源次郎尾根の取り付き口がはっきりしてきたのには驚く。だんだん歩く人が増えてきたのであろうか。やがてF5に到着だ。ここで小休止だ。でも一人では直ぐに歩き出してしまう。水の音が聞こえ出すとセドノ沢だ。水場には空のペットボトルが随分ぶら下がっている。2リットルのペットボトルに水を汲む。この書策新道を登りに使うときにはここで水を汲んで小屋に運んであげる。ここからはうっすらと雪が残り、急な斜面だけに歩きにくいことこの上もない。歩く人も少ないようで登山道も雪に覆われ一部不明の箇所がある。上に人の気配を感じると女性がおりてくる。木の又小屋で時々会うHさんだ。この人は週に2,3回は登っているという人だ。表尾根の稜線に出るまで結局会ったのはこの人一人だ。書策小屋に入ると渋谷さん元気な様子だ。髪がぼうぼうに伸びて仙人の趣だ。86、7歳でここ3年ばかり山をおりずにこの小屋で暮らしているのだ。先ほど会ったHさんや下の戸沢山荘に集まる何人かの人がボランテアで渋谷さんのサポ−トをしているのだ。お茶を飲んで少々雑談をしたがHさん達に感謝をしておられた。新大日までは泥んこの道だが次第に雪に覆われだす。木の又小屋に到着した。小屋も閑散としている。予約は一人とのことだ。3時過ぎに鍋割山を回ってこられたとかで同年輩の方が到着された。今夜の宿泊者は2名だ。夜はスト−ブを囲んでランプの下で酒を飲んで3名で9時まで四方山話だ。
 翌日、塔の岳に向かう。山頂でお決まりの富士山を見た。「偉大なる俗物め」、などと悪態をついてもやっぱり富士は富士だ。青空をバックにどっしりと端麗な姿で聳えている。さあ丹沢山往復だ。雪道で冬山気分を存分に楽しんだ。丹沢山からの戻り道ではモ−ツアルトを聴きながら歩いた。明るい陽射しの中、ピアノコンチェルトのなんだか物寂しい音が流れる。華やかな軽快な響きの中に哀切を帯びた旋律が心を打つ。そんなせいかふっとこんな楽しいときが何時まで続くのかと思った。アインシュタインが「死とはモ−ツアルトが聴けなくなることだ」と言ったそうだがこんなすごい定義にはただただ脱帽するばかりだ。やがて間違いなくモ−ツアルトが聴けなくなるときくる。淋しいがこればっかりは如何ともしがたい。ふっと気がつくと立ち止まって景色を眺めている人に追いついた。なんと木の又小屋で同宿の方ではないか。この後、二人で話しながら塔の岳に戻った。この方は小丸尾根経由で下山されるというので別れて、私は尊仏山荘で小休止の後、大倉尾根をくだり大倉に戻った


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