中西輝政著「帝国としての中国」を読む
 以前、著者の「大英帝国衰亡史」(1997年刊)を読んでとにかく面白かった。日本で言えば明治維新の頃、イギリスはバブルにわいてサッカーブームだ、グルメブームだったなどの記述を読んで驚いた。そのイギリスが新興国のアメリカ、ドイツに追い上げられてボーア戦争、第一次大戦、第二次大戦と「デフレと失業」に悩み、何度も改革に失敗した。私は女ですから殿方のように後ろを振り返りませんと言ったサッチャーが改革に当たった記述を読んだとき日本ではこういうことが出来るのかと考えた。とにかくこの著者の「帝国としての中国」をアマゾンで見たので読んでみることにした。

 本書はもともと東洋新報社から発刊されていた旬刊誌「論争」に連載されて読んだ。今回大きなフオントで再読した。とにかく触発されるところ大なるものがあった。とりわけ最近日本と中国の間にある難しい問題が顕在化してきただけに本書は極めて示唆に富む内容であった。
 折しも2015/2/25朝日新聞のオピニオン「中華民族復興」のインタビュー記事でアメリカの文化人類学者パトリック・ルーカスが中国の民族主義にについて警告をしていた
 著者は京都大中国学の伝統を継承するかの如く日本と中国の歴史をこれまでの実証史学の立場ではなく中国の文明史的な観点から根源的に検討を加える。その結論は対峙はするが対決はしない、中国とは対等であるという立場を堅持する、国際社会に普遍的なウエストフアリア型という理念を大義として掲げるというというものだ。

 同じ著者の「中国外交の大失敗」を読み、現在、「迫り来る日中冷戦の時代」を読んでいるが、日中間には本当に厄介な問題が存在していることを改めて実感した。
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