坂野潤治著「日本政治「失敗」の研究」を読む 
 日本近代史に関する本を検索すると読みたい本が沢山あるが、残念ながら私はkindle版でなければならない。アマゾンでこの本が見つかったので直ぐにダウンロードして読んだ。

 序章 先人の「失敗」に学ぶ−−「常情の国民」と「常情の改革」
 この「常情」という語は徳富蘇峯の造語で「コモンセンス」を指す。福沢諭吉、徳富蘇峯、吉野作造と日本の政治に関するビジョン(二大政党制、議院内閣制)はその根本に置いて同じなのに、徳富蘇峯は福沢に学ばず、吉野作造はこの先人達に学ばずという、この断絶がその思想的な基盤を弱めているという著者の指摘は重大だと思う。
 第一章 敗者の栄光−−日本の社会民主主義
 「戦後民主主義は占領軍に押しつけられたものではない」と著者は指摘する。
 第二章 天皇制と共産主義に抗して−−吉野作造
 「吉野における「法律論」としての天皇主権の容認は、「政治論」としての天皇主権の否認とのセットでで理解されるべきである」(松本三之介)・・・「法律論を排して政治論として天皇制特権機構を批判する吉野は、このような解釈改憲の自縄自縛から自由であり得た。」と再評価されている。
 第三章 分権システム下の民主的リーダーシップ−−−ロンドン軍縮協定
 ロンドン軍縮会議を巡る「統帥権」問題の背景を知ることが出来る。「天皇は加藤のいばく上奏に完全に無言で応対し、財部彪海軍大臣に上奏文を手渡し、その処置を海軍大臣に一任した。」財部日記によれば軍縮条約に対する昭和天皇の意思を明瞭に示している。」
 第四章 戦前日本の「平和」と」民主主義」---1919〜37年

 第五章 戦前日本の「民主化」の最終局面−−1936〜37年
 第六章 天皇側近の敗北と国際連盟脱退−−幻の御前会議
 1933年の国際連盟脱退問題に際して、内大臣牧野伸顕が熱河進攻を抑えて連盟との妥協を図るため「御前会議」を構想した。しかし、元老西園寺公は御前会議を開いても参謀本部、関東軍がこの決定に従わない場合の天皇の権威失墜を恐れて反対をした。「(連盟)脱退が恰も目的なるが如く思い込み、其目的達成に狂奔の言論界の現状、帝国人心の軽佻をしめすものにして、前途の為め憂慮に堪へず。時日経過の後は必ず悟るところあるを信ず。」と牧野伸顕は日記に書いている。
 終章 戦前日本の自由主義政党に学ぶ

 民主党の代表選挙があった。以前、山口二郎著「ブレアのイギリス」を読んでイギリス労働党がどういう過程を経て政権を奪取したかを知った。新聞を読んでいる限りでは民主党の代表選挙とは大違いのようだ。
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