原 朗著「日清戦争、日露戦争をどう見るか」を読む
 日本の近現代史に関するものを電子書籍で何冊か読んだ。読み終わると次を読むべくネットで検索をするのだがなかなか見当たらない。たまたま本書がヒットした。徳富蘇峰、亀井勝一郎等の著書がどんどん出てくる。

本書を読んでの感想を書き出してみた。

 著者は日清戦争を第一次朝鮮戦争、日露戦争を第二次朝鮮戦争と位置づける。明治維新が一段落すると欧米列強に肩を並べるべく朝鮮の植民地化に走り出すのだ。その過程での清国との戦争、ロシアとの戦争というわけだ。

 司馬遼太郎「坂の上の雲」も大勢の日本人が読んで明治という時代に気分が高揚したと思う。私もそうだ。ただ歴史の反対側(韓国)から見ると当たり前の話だが日本の植民地支配は大変大きな影響を持ったことが理解できる。石橋湛山が満州事変で論陣を張ったようにどんなことをしても植民地政策がうまく行くということはない。現代でもイギリス、フランスが抱えるその負の遺産の重さには改めて注目しなければならない。

 第一次世界大戦中に中国に突きつけた「対華21ケ条の要求」は日本の最大の失策であった。この要求から中国全土に排日抗日運動に火がついたのだ。アーサー・ストックウイン教授が指摘するように、この歴史を多くの日本人が学んでいないことが今日の日本の最大の問題だと思う。

 ワシントン軍縮会議全権代表の加藤友三郎大将が会議の中途帰国する堀悌吉中佐に託して井出謙冶海軍次官に伝えた伝言書にはその後の軍人達の認識との違いには驚くばかりだ。伝言書曰く、「国防は軍人の専有物にあらず」とし、「平たく言えば金がなければ戦争は出来ないということであり、日米決戦は不可能」とある。堀悌吉は山本五十六と海兵同期(32期)でロンドン軍縮会議の後、 海軍省軍務局長で昭和9年に予備役に編入されている。こうして条約派の指導者達が舞台から退いていった。

大逆事件が永井荷風や、徳冨蘆花に与えた影響を見ると明治という時代の影の部分が見えてくる。本書で大逆事件を担当した検事が平沼騏一郎だと知った。
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